偏平足の評価と診断:機能と構造を見極める
1. 偏平足とは何か?
偏平足(Flat Foot、Pes Planus)とは、足底アーチ、特に内側縦アーチ(medial longitudinal arch)の低下または消失を特徴とする状態である。偏平足は一見すると単なるアライメントの異常に見えるが、実際には筋機能、靭帯弛緩、骨配列、神経制御など複数の要因が複雑に関与している。
偏平足には主に以下の2種類がある:
構造的偏平足(Rigid Flatfoot):立位・非荷重時ともにアーチが低下したまま。骨格的問題や先天性要因が関与。
機能的偏平足(Flexible Flatfoot):非荷重ではアーチが存在するが、荷重時に消失する。多くの成人にみられる可逆性のあるタイプ。
2. 偏平足の主な原因
後脛骨筋機能不全(Posterior Tibial Tendon Dysfunction, PTTD)
靭帯弛緩(特に足根舟状骨の周辺)
過回内(Over-pronation)
立位バイオメカニクスの破綻(特に前足部外転・踵骨外反)
小児期の足底感覚発達不足
肥満や不適切な靴などの生活要因
3. 偏平足の静的評価
✅ ① 視診による足部アライメントの確認
アーチの有無(内側縦アーチ)
非荷重→荷重時にアーチが消失するか
アキレス腱の走行
垂直か内反(正常)か、外反(偏平足傾向)
後足部の傾き(踵骨外反)
舟状骨の位置(Navicular Drop Testへ)
✅ ② Navicular Drop Test(舟状骨下降テスト)
【方法】
非荷重で舟状骨の高さを測定
立位で再測定し、下降量をmmで評価
【基準】
10mm以上の下降 → 偏平足傾向
感覚入力とアーチ保持筋の活動を推測できる評価法
4. 偏平足の動的評価
✅ ① フットプリント(足圧分布)
足底圧マットや濡らした足跡などを使用
中足部の接地面積が広い場合、偏平足の疑い
✅ ② Functional Movement
オーバーヘッドスクワット時の膝の動き
→ 膝の内側偏位(Knee Valgus)は足部の回内と連動する
片脚立位でのバランス
→ 足部支持性、内在筋の働き、前庭覚・体性感覚の統合を観察
Toe Raise Test(踵上げテスト)
片足立ちでつま先立ちをさせる
アーチが形成されるか、踵が内反するかを確認
後脛骨筋機能の簡易評価に有用
5. 機能的な感覚評価(神経系との関係)
✅ 足部内在筋の感覚制御
偏平足では足底感覚の鈍麻や足部マップの乱れがある場合がある
足底に軽く刺激を加えた状態での姿勢制御や動作評価も有効
✅ 感覚統合評価の視点
偏平足は視覚・前庭覚・体性感覚の統合不全からも生じるケースあり
裸足でのプロプリオセプション訓練が有効な介入手段となる
6. 偏平足の診断:医学的視点
✅ 医療機関での画像評価
X線評価:
踵骨の傾き(Calcaneal pitch)
Meary’s angle(第一中足骨と距骨のアライメント)
Talonavicular coverage angle
MRIやエコー:
後脛骨筋腱の変性や断裂の評価
7. トレーナー・セラピストの現場での判断指標
静的な舟状骨の位置と下降量
踵骨の外反傾向
足底感覚とアーチ構造の可逆性
動的アライメント(スクワット・ランジ・片脚バランス)
内在筋・後脛骨筋の収縮誘導可否
足底圧と体重移動パターンの偏位
8. 偏平足が引き起こす二次的影響
膝関節:内反ストレス増加、鵞足炎、PFPS
股関節:大腿骨内旋増大、腸腰筋短縮
腰部:骨盤前傾、仙腸関節痛
体幹・頚部:側弯様姿勢、頭部前方位
まとめ
偏平足の評価では、構造的か機能的かの見極めが極めて重要であり、静的評価と動的評価を組み合わせることでより正確な診断が可能となる。特に足部内在筋や後脛骨筋の機能、感覚統合の乱れを読み取ることで、運動療法やトレーニングの質が大きく変わる。
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