骨格筋と腱の構造
骨格筋と腱の基礎知識
- 骨格筋は体の可動部を動かす筋肉で、部位ごとに腱や骨とつながっている。適切な運動は筋の発達、持久力の向上を促すが、安静状態が長期間におよぶと、筋の萎縮や退行を引き起こす。
- 骨格筋と骨を強固につなぐのが、腱である。柔らかい筋肉のままでは、硬い骨にしっかりと付着することが困難であるため、骨格筋と骨の間に腱が存在する。
骨格筋の構造
- 骨格筋は、タンパク質でできた太さの違う2種類の筋フィラメント(ミオシン、アクチン)からなる。これらが互い違いに並んで(この配列の重なりが横紋構造となる)筋原線維をつくり、それがまとまって筋線維、さらにその集まりが筋束となる。
骨の基礎知識
- ヒトの骨格は、成人で通常206個の形の異なる骨から成り立っており、骨と骨は関節で連結され、靭帯で補強されている。
- 骨の形状は、細長い形や不規則なものなどさまざまであるが、主に長管骨・短骨・扁平骨・不規則(形)骨の4つに分類される。
骨の構造
- 骨は骨膜と骨質、骨髄からなる。骨膜は表面を覆う白色の結合組織で、神経や血管、リンパ管が走っている。
- 骨質は皮質骨(緻密質)と海綿骨に分けられる。皮質骨はカルシウムやリンを主成分とする硬い骨質で、骨膜のすぐ内側にある。海綿骨はその内側にある多孔質のもろい組織で、骨髄腔をつくっている。
- 骨髄腔の中は骨髄細胞で満たされており、ここで血液がつくられる。
リモデリング(再構築)
- 骨は、古い骨を分解吸収する破骨細胞と、破骨細胞が壊した部分に新しい骨をつくる骨芽細胞の働きにより、新陳代謝を繰り返している。
- 骨折したときには、これらの骨吸収と骨形成の働きによって骨が修復され、リモデリング(再構築)される。
関節の構造としくみ
関節の基礎知識
- 骨と骨が連結した部分を関節といい、不動関節・半関節・可動関節などがある。また、可動関節はその動き方によって、いくつかの種類に分けられる。
- 関節の運動には、屈曲・伸展・外転・内転・外旋・内旋・回内・回外・背屈・底屈などがある。
- 関節を構成する骨と骨の間には軟骨があり、衝撃を吸収したり、骨同士がこすれて傷ついたりしないように、クッションの役割を果たしている。
不動関節
- 不動関節とは、骨と骨とが密接に連結しており、まったく動かない関節を指す。そのほとんどは頭蓋骨にある。
半関節
- 半関節は、骨同士が軟骨で結合しており、数ミリの範囲で動く関節で、それによって外部からの衝撃を吸収する。恥骨結合や脊柱の椎間板などが、これに分類される。
可動関節
- 可動関節は関節頭という凸型の部分と、関節窩という凹型の部分が組み合わさってできている。
- 関節の周囲は関節包で包まれている。関節包の内側には潤滑油の役割をもつ滑液を分泌する滑膜が、その外側には関節を連結させる靭帯があり、筋肉の動きを骨に伝える腱がある。また、膝関節には半月板がある。これらがスムーズな動きをつくり出している。
- 可動関節は四肢に多く、部位によって、構造や動き方、可動域がある程度決まっている。代表的なものに、球関節、蝶番関節、楕円関節などがある。
- 可動域を超えた力が働くと、脱臼や靭帯損傷などの障害を起こす原因になる。
神経の構造としくみ
神経の基礎知識
- 神経系は、中枢神経と末梢神経に大きく分けられる。
- 全身にはりめぐらされた神経は、電気信号を媒介として体全体をコントロールし、ホルモンを分泌する内分泌器官と連携をとりながら、体内の恒常性を保っている。
- 中枢神経と末梢神経との間でやり取りされる情報は、「ニューロン」と呼ばれる神経細胞がすばやく伝達している。
中枢神経
- 脳と脊髄からなる神経を中枢神経といい、全身の神経システムを統括指令している。たとえば、私たちが歩道を歩いているときに、前方からスピードを出した自転車が走ってくるのを見たら、ぶつからないように体を移動させる。そのような判断と動作を瞬時に行うのは、中枢神経の働きによるものである。
- 上記の場合は、まず目の奥にある視神経が、スピードを出した自転車がこちらに向かっていることを認識して、脳に伝達する。脳はその情報を整理し、どう行動するかを判断して指令を出す。その指令内容が運動神経系伝達された結果、体が動くのである。
末梢神経
- 脳や脊髄から全身に伸びているすべての神経を末梢神経と呼び、体性神経と自律神経で構成されている。
- 体性神経とは、体表でとらえた情報を脳に伝えたり、自分の意志で運動をコントロールしたりする神経である。冷たさや熱さ、痛み、皮膚のかゆみなどを伝える感覚(知覚)神経と、手足の筋肉を動かす運動神経に分けられる。
- 自律神経には、交感神経と副交感神経がある。心臓の拍動や胃腸の蠕動などを支配しており、意志とは無関係に働く神経である。
- 体性神経と自律神経は、ともに中枢神経によって制御されている。
- 骨格筋は筋束がいくつも束になってできており、筋膜と呼ばれる組織で包まれている。
骨格筋の機能
- 骨格筋は随意筋であり、運動や姿勢の保持に働く。また、筋肉組織には毛細血管が通っており、筋肉の収縮に必要なブドウ糖や酸素を供給している。骨格筋は、その収縮によって熱を産生、放出する機能ももつ。
筋収縮のしくみ
- 筋収縮は、脳や脊髄などの中枢神経から指令を受け、末梢神経が筋肉に信号を送ることで起こる。収縮するときには、太い筋フィラメント(ミオシン)が、細い筋フィラメント(アクチン)の間に深く入り込む形になる。末梢神経からの信号が途絶えると、ミオシンとアクチンの重なりは浅くなり、筋肉は弛緩する。
腱の構造
- 腱は、コラーゲンでできた結合組織が束になった線維性の帯で、シャーピー線維(貫通線維)によって骨に強固につながっている。シャーピー線維は、骨膜を貫通して骨の外側につながっている。
- 腱には、細い棒状のものと、膜のように薄く広がったものがある。腱は比較的硬い結合組織だけでできているため、伸縮性はあまりなく、無理な力がかかると断裂を生じやすい。もっともよく見られるものに、アキレス腱断裂がある。
- アキレス腱は体の中で最大の腱であり、ふくらはぎの下腿三頭筋(腓腹筋とヒラメ筋)が踵骨に停止するための仲介をしている。
- 手や足の腱は、腱鞘(アキレス腱の場合はパラテノン)という筒状の結合線維によって磨耗から保護されている。
運動と骨格筋
運動の多くは、骨と筋肉、関節が協調しあって行われる。たとえば、腕の肘関節を支点とし、上腕二頭筋を収縮させると、肘が屈曲する。
また、ある動作のときに収縮する筋肉を主動筋、弛緩する筋肉を拮抗筋という。上腕を挙上する動作では肩上部の三角筋が収縮し、上腕骨と肩甲骨下部を結ぶ大円筋が弛緩して、その動きを助ける。
参照:骨の働き
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