頸椎の解剖学

頚椎の解剖学的解説について

頚椎とは、首の部分を指している単語である。

後頭関節(頭蓋骨・頭蓋骨と頚椎の繋がりが大きい部分)がもっとも可動域が高く、第1頚椎と第2頚椎は「歯突起」と呼ばれ、第2頚椎から突出している骨に対し、第1頚椎が被さるように乗っている(環軸関節)点が、頚椎の特筆すべき特徴である。

 

大前提として、頚椎という部位は肩や首のこりなどで悩みを抱えているクライアントが多い部位ではあるが、基本的に強い力を与えないことが重要である。

骨や筋などの組織的な問題が凝りの原因に繋がっている場合は強い力によるアプローチは効果的ではあるが、そうでない場合も存在するため、安易に判断し突出的な治療を行うのは望ましくない。

筋肉の凝りがひどい場合でも、本人がそれを感じていないという場合も多く存在し、身体のトラブルの「感じ方」は万人に共通ではないため、傷や怪我などの急性的な問題でない限り、組織的な問題=体のトラブルというわけではない。

力任せのアプローチは、むしろ神経系に新たなトラブルを起こしかねない行為である。

 

 

頸部の姿勢不良

頸部の姿勢不良=ストレートネックが非常に多く見受けられる。

ストレートネックを骨格筋レベルで解説すると、頚椎の前弯が失われてしまっている状態といえる。

ストレートネックは胸鎖乳突筋の影響が大きく、胸鎖乳突筋の両側が同時に張った状態になると、上部頚椎が伸展・下部頚椎が屈曲し、ストレートネックが生まれてしまう。

 

人類とその他の四足歩行の動物を比較すると、人類が脳を発展させる(頭部を肥大化させる)過程において、首が前に出た状態だと頭部を肥大化させた際に首が頭部を支えきれずに落ちてしまうため、スムーズに二足歩行ができるように進化し、その結果、胸郭の上に頭部が乗っている形へと進化した。

ストレートネックの捉え方は、胸鎖乳突筋が働くことにより頭部が前方へ突出していると考えるより、何かしらの姿勢不良がおき、身体のバランスを保つために結果的に頭部が前方に突出し、頭部の落下を防ぐため胸鎖乳突筋が働いていると考えたほうがよい。

 

その前提を理解しているか否かで対応が変化する。

胸鎖乳突筋の凝り=ストレートネックという知識のみであった場合、単純に胸鎖乳突筋をリリースし、その結果胸鎖乳突筋は筋長を保てなくなり(頭部を支えきれなくなり)他の筋肉が働くこととなる。

胸鎖乳突筋の凝りが取れる=根本的なストレートネックの改善とはならないのである。

胸鎖乳突筋に捉われず、他の筋群や骨盤などにも目を向け、本質的なストレートネックへのアプローチを考える必要がある。

安易な胸鎖乳突筋へのリリースを行わないことが重要である。

 

胸鎖乳突筋は頚椎の伸展・屈曲のどちらの動作にも作用する。

体内には頚椎が屈曲・伸展するのか判断する「軸」が存在しており、それに対し胸鎖乳突筋が前と後ろのどちらに働くかによって伸展するか屈曲するかが決まる。

 

頚椎の後弯を作るように顎を引くと、胸鎖乳突筋は頚椎より前を通る状態となるため屈曲方向に働く。

逆に前弯が強まった状態となると、頚椎より後ろを通る状態となるため伸展方向に働く。

胸鎖乳突筋はどちらにも作用するため、上部頚椎の伸展、下部頚椎の屈曲という状態が出来上がった際にストレートネックが生まれる。

 

ストレートネックのクライアントに対し、椎前筋のトレーニングを行ったとしても、瞬間的な解決にしかならない。最悪の場合、状況の悪化も考えられる。

骨盤、脊柱などの問題に目を向け、「なぜ頭部が前方に出ているのだろう?」という点を解明し、それに向けてのアプローチを行うことが重要となる。



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