【NERVE×ANATOMY】顎関節症と視覚機能について

―「顎の問題」を顎だけで考えない―


顎関節症というと、咬筋や側頭筋の緊張、噛み合わせ、歯ぎしりなどが注目されやすい。


しかし顎運動は、頭部・頸部の姿勢制御や視覚機能と切り離されたシステムではない。



視覚と顎がつながる理由


視覚情報は後頭葉で「見る」だけではなく、


視覚入力 → 上丘・小脳・脳幹 → 眼球・頭部・頸部の姿勢制御


にも利用される。


例えば右側を見続ける、近距離作業を長時間続ける、視線を安定させにくい、といった条件では、眼球だけでなく頭頸部の位置や筋活動も変化し得る。


ここに顎が関係する。


顎関節は頭蓋骨にぶら下がる下顎骨の関節であり、咀嚼筋だけでなく、




  • 頸部筋群

  • 舌骨上筋・舌骨下筋群

  • 三叉神経系

  • 頭部姿勢


と密接に関連する。


そのため、


視覚機能の変化 → 頭部・頸部制御の変化 → 顎周囲の筋活動や顎運動の変化


という影響は十分考えられる。







特に重要なのが「三叉神経」と脳幹


顎関節や咀嚼筋からの感覚情報の多くは三叉神経系を介して脳幹へ入る。


一方、眼球運動も、




  • 動眼神経

  • 滑車神経

  • 外転神経

  • 上丘

  • 前庭神経核

  • 小脳


などの脳幹ネットワークによって制御されている。


つまり顎と眼球は直接一本の神経で結ばれているわけではないものの、


脳幹レベルで近接した感覚運動ネットワークの一部として相互作用する。


実際、眼球運動や視線条件によって咀嚼筋活動や下顎運動が変化する可能性を示す研究もある。ただし、ここから「視覚障害が顎関節症の原因」とまでは言えない点は重要。







近距離作業も面白いポイント


スマホやパソコンでは、


近くを見る

輻輳・調節

視線を固定

頭頸部姿勢も固定されやすい

頸部・顎周囲の筋活動が変化


ということが起こり得る。


さらに集中やストレスが加われば、歯の食いしばりや咀嚼筋活動まで増える場合がある。


したがって「スマホを見るから顎関節症になる」という単純な話ではなく、


視覚課題+頭頸部姿勢+三叉神経系+情動・覚醒+顎運動


を一つのシステムとして見る方がよい。







現場ではどう見る?


顎関節症のクライアントなら、顎だけでなく、


眼球運動 → 頭部運動 → 頸部 → 顎


まで評価すると面白い。


例えば、


正面注視で開口
→右注視で開口
→左注視で開口


を比較する。


さらに、


輻輳
サッケード
滑動性眼球運動
頭部回旋を伴う視線保持


などの前後で、




  • 開口量

  • 顎の偏位

  • 痛み

  • 咬筋・側頭筋の緊張感


が変化するかを見る。


変化したからといって「眼球が原因」と断定するのではなく、


顎の症状が視覚・頭頸部を含む感覚運動条件によって変化するタイプなのかを探る評価


として使うイメージ。



まとめると


顎関節症=顎の構造異常だけではない。


視覚情報は頭部・頸部の姿勢制御を変え、顎からの情報は三叉神経系を介して脳幹へ入る。さらに前庭系、小脳、情動・自律神経系も加わる。


だから、


「顎が痛いから顎をほぐす」だけではなく、眼・頭・首・顎を一つの感覚運動システムとして評価する。

この情報へのアクセスはメンバーに限定されています。ログインしてください。メンバー登録は下記リンクをクリックしてください。

既存ユーザのログイン